抜歯基準(重度歯周病)

当院では極力本人の歯を温存したいと考えております。そのため、

歯周病の際は「歯周外科処置」「歯周組織再生療法」等

虫歯、破折(歯が折れた)の際には「歯冠修復治療」「歯内治療」等

の歯科治療を行うことで、最大限歯を温存することを目指しています。


しかし重度の歯周病を起こしている場合にはどうしても抜歯が適応となる場合があります。

抜歯をする・しないの決定には「病的要因」と「ホームケア的要因」(ホームケアができるかどうか)この2つが大きく関わります。


「病的要因」:下のフローチャートにあるように、歯周病の重症度が進めば処置が大変なもの(再生医療、抜歯)になることはイメージしやすいかと思います。重症度は適切な歯科検査(麻酔下での歯科専用Xray、プロービング)により診断します。しかし単に重症度だけでは治療の内容は決定できません。

「ホームケア的要因」:私達がお手伝いできるのは歯周病の治療までです。そこから先はご自宅での歯ブラシによるケアができなければ再び歯周病になってしまいます。歯周病の重症度が進めば進むほど、その歯を維持するには非常に難易度の高い歯ブラシ技術が必要になってきます。


この2つの要因をコントロールして初めて歯周病治療は成立するのです。

例えば下に例を示しますが、歯の分岐部が見えてしまっているような子では、歯間ブラシをその隙間に通すような歯ブラシを行う必要があります。非常に難しい歯ブラシ技術ですが、このレベルの歯ブラシを行ってあげないと歯周病が進行し、顎を骨折させてしまったり、全身病に進行してしまったりする可能性があります。

しかしそのような難しい管理でも行っていただける飼い主様もいらっしゃるため、診察の際に

・どこまでのホームケアが現時点で可能か?

・その子がどこまでのケアなら協力してくれそうか?

・今後どれぐらいホームケアに時間がかけられそうか?

といった内容を十分にお伺いさせていただき、この子とその飼い主様に最適な治療planを提案させていただきたいと考えています。

抜歯が必要なレベルの歯を残しておくとどうなるか?責任は誰にある?

抜歯が必要なレベルの歯を闇雲に残すと。。。

①顎が骨折してしまう

②目の下に穴が空いて膿が出る

③命に関わるような肺炎、心臓病、腎臓病、肝臓病等の全身病になる

④鼻汁、鼻血が出る

⑤くしゃみが出る

⑥痛みで食事が食べられなくなる

⑦強い口臭がする

⑧ヨダレで顎が汚れるようになる

⑨隣の歯までダメになる  etc...

この写真のように根分岐部病変3度(F3)で歯周炎指数4(PD4)の子の歯をスケーリングだけしてとりあえず歯を残す。

これだけで終わってしまうと非常にまずい処置です。

一見すると歯はきれいになっていて、口臭も減って歯が残るので飼い主様には満足頂けるかもしれません。

しかしこの状況で残すのであれば、ポケット内の徹底した歯周外科処置を含む清掃を行い、かつ、お家でのホームケアとしては外側と内側の歯ブラシはもちろんのこと、歯間ブラシで歯の分岐部(オレンジ矢印)も磨かなければなりません。

でなければ結局この歯の、目には見えない根っこの部分で知らないうちに(見た目はきれいなので気づきにくい)歯周病が進行し、①〜⑨に示した病気に進行してしまう恐れがあるのです。


ですからこの子はPD4なので、当院のフローチャートの基準からすると、ホームケアが歯間ブラシまでできるなら残すことも検討するが、できそうにないのであれば3本とも抜歯をオススメします。


歯を残す病院=良い病院、歯を抜く病院=悪い病院

と考えられることが多いのですが、

正直、飼い主様の要望に応えて歯を単純に残す。それ自体は非常に簡単なことです。(重度歯周病であっても)

しかし重度歯周病の歯をあえて残すと決めたからには

獣医師には「徹底した見えない歯の根っこまでの清掃」や、必要に応じて「再生治療」といった治療をフォローアップを含めて行う責任が、

飼い主様には治療した状態を保つため「毎日の歯ブラシ」や「半年〜1年に1回麻酔下メンテナンス」を受けさせてあげるという責任が、


治療を受けるワンちゃん、猫ちゃんに対して生まれるのです!!!


その責任をお互いが十分に果たせるようであれば積極的に歯を残してあげることは本人にとって良いことだと思いますが、そこまでのケアが難しい場合には、上記したように闇雲に残した場合のデメリットを考えると、無理やり残しても本人を苦しめるだけになりかねないので、重度な歯周病の場合には抜歯も一つの選択肢だと思うのです。(当然重度かどうかは歯科用Xrayやプロービングといった詳細な検査を実施した上で診断します。見た目や、歯石の有無、歯が動くからということだけで判断することはありません。)

その子の数年先まで考えた治療を行うことこそが、目先歯を残すことよりも、その子の寿命を伸ばすことや、快適な生活を送らせてあげることに繋がると当院では考えております。

抜歯をするとどうなる?

・全ての歯を抜いたとしても食事は食べられます。

・顔の形が変わります。牙は顔の形を大きく支えている歯なので、抜いてしまうと顔が細くなった印象を受けることがあります。

・食べこぼしが多くなります。だんだんに慣れてはいきますが、歯がないので食事がポロポロと落ちやすくなります。

・噛むことができなくなります。おもちゃをかじったりすることはできなくなってしまいます。噛む喜びは失われます。

・これは私見ですが、人では噛むことが認知症予防になると言われています。動物でそういったデータ的な証拠はおそらくないと思われますが、同じように関連があるのでは?と思っています。最近は長寿の子が増えてきて、認知症による夜鳴きなども大きな問題となってきています。そういった予防にも歯の健康を維持することは繋がるのではないかと考えています。

そもそも抜歯にならないようにするためには?

お家でできることは歯ブラシです。

歯磨きガムや歯磨きおもちゃ、マウスウォッシュ、歯石が落とせるスプレーなど、様々な製品がありますが、歯ブラシの効果に勝るものはありません。というか天と地ほど効果に差があります。だから人間は歯ブラシをしているのです。

歯ブラシをしないで歯の病気にならずに一生を終えられる子は恐らく存在しないと思います。3歳を超えて1度も病院で歯科治療を受けたことがなく、お家でも歯ブラシをしていない子は、まずは一度唇をめくって歯を見てあげてください。難しいようなら口の匂いをかいでみて下さい。正常なワンちゃん猫ちゃんの口はほぼ無臭です。

ちょっと怪しいなと思われるようでしたら、今からでも遅くないのでぜひ一度歯についてご相談にいらしていただけたらと思います。

歯ブラシは力ずくでやろうとすると多くの子が歯ブラシを嫌いになってしまい、二度と磨かせてくれなくなってしまうことさえあります。歯ブラシ練習はゆっくり進めるのがコツです。当院では歯ブラシセミナーも開催しておりますので、ご興味があれば参加していただけたらと思います。


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